平成30年12月28日に「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた関係閣僚会合」において、「高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」が了承されました。
この施策によって、幼児教育の金額負担が軽減されることと合わせて、高等教育についても、高等教育無償化や、授業料減免及び給付型奨学金の支援対象者や支援額が大幅拡充されることになります。
今回は、この高等教育無償化の制度が、どのような制度で、どのような方が対象となるのか。について紹介をしていきます。
高等教育無償化の制度の基本的な考え方
そもそもこの無償化制度を検討するにあたった背景やその対策について、文科省から一連の考え方が打ち出されました。
・経済状況が困難な家庭の子供ほど大学等への進学率が低い
・最終学歴によって平均賃金に歴然とした差がある
・子供を持たない理由の1位は「子育て・教育にお金がかかりすぎること」(特に高等教育段階の費用が大きな負担と認識されている)
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高等教育無償化制度の概要
では、具体的な制度については、どのようなものになっているのでしょうか。
具体的な制度について、一覧にまとめました。
授業料減免制度について
授業料減免は、各大学等が上限額まで授業料等の減免を実施します。減免に要する費用を公費から支出します。
大学については、入学金約30万円弱、授業料は約50万円~70万円が減免されます。
(国公立)
入学金・授業料ともに、省令で規定されている国立の学校種ごとの標準額までを減免。
(私立)
入学金については、私立の入学金の平均額までを減免。授業料については、国立大学の標準額に、各学校種の私立大学の平均授業料を踏まえた額と国立大学の標準額と差額の2分の1を加算した額までを減免。
給付型奨学金の支給の拡充について
給付型奨学金は、日本学生支援機構が各学生に支給します。
(国公立)
大学・短期大学・専門学校 自宅生:約35万円、自宅外生:約80万円
(私立)
大学・短期大学・専門学校 自宅生:約46万円、自宅外生:約91万円
高等教育無償化制度の要件について
このように、消費税が増税される財源を利用して、住民税非課税世帯(それに準じる世帯も含む)を対象に、経済負担を軽減し、学修機会を設けることを主な目的としています。
今までは、金銭的余裕がないからと高等教育を受けるという選択肢を選べなかった方も進学意欲があればそのチャンスが生まれます。
ただし、消費税という国の税金を財源とする以上、支給される支援対象者や、支援を行う大学等について、支給するに値するかどうかについて厳格にされることになります。
支援対象者の要件(個人要件)について
【学業・人物に係る要件】
・支援措置の目的は、支援を受けた学生が大学等でしっかり学んだうえで、社会で自立し、活躍できるようになること。進学前の明確な進路意識と強い学びの意欲や進学後の十分な学習状況をしっかりと見極めた上で学生に対して支援を行う。
・高等学校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、高校等が、レポートの提出や面談時により本人の学習意欲や進学目的等を確認。
・大学等への進学後は、その学習状況について厳しい要件を課し、これに満たない場合には支援を打ち切ることとする。
その他の主な条件
・日本国籍、法定特別永住者、永住者又は永住の意思が認められる定住者であること
・保有する資産が一定の水準を超えていないこと
大学等の要件(機関要件)について
大学等での勉学が職業に結びつくことにより格差の固定化を防ぎ、支援を受けた学生が大学等でしっかりと学んだ上で、社会で自立し、活躍できるようになるという、今回の支援措置の目的を踏まえ、対象を学問追求と実践的教育のバランスが取れている大学等とするため、大学等に一定の要件を求めるとあります。
<一定の要件とは>
1. 実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上配置されていること。
2.法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること
3. 授業計画(シラバス)の作成、GPAなどの成績評価の客観的指標の設定、卒業の認定に関する方針の策定などにより、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること。
4. 法令に則り、貸借対照表、損益計算書その他の財務諸表等の情報や、定員充足状況や進学・就職の状況など教育活動に係る情報を開示していること
まとめ
高等教育無償化制度については、経済的な格差に関わらず進学のチャンスを設けるためのもので、大学に行きたくてもいけない世帯にとっては、とてもありがいたい制度となります。
しかし、私大連(一般社団法人日本私立大学連盟)からは、私立大学の「特性」や「自主性」を損なう懸念についても提言しています。実務家教員や外部理事の割合による支援対象校の要件は、この政策の本来の目的に関係ない基準の導入と訴えています。
これらの政策が貴重な税金を財源にしていることから、しっかりとしたルール作るが必須だと思いますが、今後も動向に注目していく必要がありそうです。