大学生の就職率が過去2番目となる水準になったと発表がありました。
文科省と厚生労働省が行った調査によると、2018年度卒業の大学生の就職率は97.6%で過去最高を記録した2017年度より0.4%低下はしたものの、かなりの高水準となりました。
さて、現在非常に高い水準なる就職率ではありますが、この就職率についてはいくつかの定義のもとに集計されています。
このページでは、
これらの就職率ごとの大学ランキングについて紹介すると同時に、そのランキングが何を表しているのか。そのランキングによって偏った印象を受けてしまう注意点について
紹介をしていきます。
「本当に就職に強い大学」ランキング
今回元にするデータは、東洋経済に掲載された「本当に就職に強い大学」ランキングについてです。
冒頭にある97.6%という数字は文科省等が行う調査で就職課やキャリアセンターなどが把握している学生であり、届けを出さずに就職活動を行っている学生は含まれていない。
そうした層の中で就職できなかった学生は、就職率の算出に反映されない。と説明が続きます。
「本当に就職が強い大学」ランキングの算出方法
こうした状況から、大学通信は、より実態に即した就職状況を把握するため、卒業生から大学院進学者を引いた学生に対する就職者の割合を算出しました。
「実就職率」(就職者数÷(卒業者数−大学院進学者数)×100)を定義し、その率を就職力の指標として採用しています。
「本当に就職が強い大学」ランキング一覧
そして、実際のランキング結果が以下のとおりです。
出典:東洋経済ONLINE 最新版!「本当に就職に強い大学」ランキングhttps://toyokeizai.net/articles/-/229469
「本当に就職に強い大学」ランキングからわかること
さて、ランキングを見てみると上位層は工業大学が占めていることがわかります。
ここ近年の傾向で製造業の採用が大きいことや、建築・土木系、情報系企業に高い採用需要があることが理由です。
女子大学も上位を占めていることがわかります。
偏差値上位大学の順位は・・・
このランキングは「実就職率」を定義したうえで、就職に強い大学のランキングを作成していますが、就職に強い大学=偏差値の高い大学と思っている人が多いのではないでしょうか。
例えば東京大学は誰もが知る日本トップの大学ですが、このランキングでは、かなり下位に位置しています。
東京大学は就職に弱いのでしょうか。
もちろんそんなことはありません。
他にも旧七帝大(東京大学、京都大学、北海道大学、東方大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学)や、筑波大学や一橋大学など、最難関国立大学を見ても、ほとんどが下位層に位置しています。
また、私立大学を見ても、早慶上理(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学)やGMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)は下位層に位置しています。
何故難関大学は下位層に位置しているのか
結論から言うと、このランキングの集計方法に答えがあります。
記事中にも紹介されていましたが、優秀な学生が集まる大学は、進路も多様だと言うことです。
これはあくまで大学院進学者以外の就職をした比率を算出していますから、
起業した学生や、資格試験準備のための浪人は未就職者というカウントになります。
国際公務員講座を受ける人や国際機関で働くために、違った道で勉強をする人、プロスポーツ選手や女優となる人は、カウント上は未就職者になります。
このランキングが表しているもの
以上のような理由から、私は「本当に就職に強い大学」ランキングと言って良いのだろうかと少し疑問に思ってしまいました。
このランキングは「実就職率」と定義されていますが、正確な表現をするならば
進路がある程度多様化しておらず、就職を普通にする人が多い大学のランキング
のように感じてしまいました。
まとめ
この記事をみた受験生やその親御さんの中で、ランキングが上位だからこの大学に行こう!
(実際はそんな人はいないかもしれませんが)
と思った方は注意が必要です。
少なくとも、就職の需要が多い分野であったり、就職課が最後まで面倒をみてくれる良い大学であることは間違いないと思いますが、それイコール良い企業・希望の企業に入ることができる大学とは限らない点に注意が必要です。
偏差値のレベルよりも、良い企業に入っている学生が多い大学や、有名企業へ多く採用されている大学の一覧を見た方が、「本当に就職に強い大学」という言葉には合っているように感じます。